ウォーターサーバー事業の原価率は、一律の相場数字を断定できるものではありません。本記事では、水代、配送費、保守費、顧客獲得費のどこまでを含めて試算すべきかを整理しています。
原価率を比べるときは、水の仕入れ費だけでなく、配送・設置・保守を含む範囲をそろえる必要があります。さらに、契約形態ごとの業務分担を確認し、顧客獲得費や解約まで含めて採算を試算することが大切です。
ウォーターサーバー事業の原価率は、水の仕入れ費用だけでは正確に判断できません。事業のコスト構成を考える際は、まずどこまでを原価として扱うかを決める必要があります。
水代という「狭義の原価」だけを見るのか、サービスを提供するための配送・設置・保守まで含めた「提供原価」として扱うのか、あるいは新規獲得のための「顧客獲得費」まで加味するのか。この定義を揃えないまま他社の数字と比較しても、正しい評価はできません。
社内で採算を管理するときは、費用の範囲を3段階に分けると、どこで利益が減っているのかを確認しやすくなります。次の区分は会計上の統一基準ではなく、事業管理のための整理例です。
| 管理する指標 | 含める費用の例 | 計算式 |
|---|---|---|
| 商材原価率 | 水、フィルター、容器、仕入商材 | 商材原価 ÷ 売上高 × 100 |
| 提供原価率 | 商材原価、配送、設置、回収、保守 | 提供に直接かかる費用 ÷ 売上高 × 100 |
| 事業コスト率 | 提供原価、営業、販促、顧客対応、システム | 事業に配賦する費用 ÷ 売上高 × 100 |
実際の事業運営にかかる費用を正しく把握するには、水代に加えて以下の費目を分けて試算することが大切です。各種費用は契約件数の増加に応じて増えやすい傾向にあります。
倉庫賃料、車両リース料、システム利用料、管理部門の人件費など、契約件数が少なくても発生する費用です。
水やフィルターの仕入れ、配送資材、決済手数料など、出荷量や契約件数に応じて増減する費用です。
広告費、催事費、販売手数料、成約特典など、新規契約を獲得するために発生する費用です。
サーバーの設置、初回配送、説明、登録作業など、契約開始時に集中して発生する費用です。
ウォーターサーバー事業のコスト構成は、水そのもの以上に、配送や保守にかかる費用の影響を強く受ける仕組みです。業界団体による報告でも、運送費や燃料費、人件費の高騰が事業運営における負担要因と指摘※されています。
自社で構築する配送体制にかかる負担を軽く見積もることは避け、各種変動費の上昇リスクを原価の見立てに正しく反映させましょう。
ウォーターサーバーでは、サーバーレンタル料が無料でも、水代や月額料金などの継続売上で費用を回収するモデルがあります。事業者側では「何が無料か」ではなく、どの売上で初期費用と継続費用を回収するかに置き換えて考えます。
| 比較項目 | 宅配型 | 浄水型 |
|---|---|---|
| 主な継続売上 | 水の定期購入代金、レンタル料、サービス料 | 月額利用料、レンタル料 |
| 発生しやすい変動費 | 水、容器、梱包、配送、回収 | フィルター、交換部品、訪問保守 |
| 初期に発生しやすい費用 | サーバー、設置、初回配送、顧客獲得 | サーバー、設置、工事、顧客獲得 |
| 確認したい管理指標 | 顧客あたりの注文量、配送密度、配送原価 | 稼働台数、保守回数、フィルター交換費 |
事業に参入する際の契約形態によって、自社で負担する業務の範囲が異なり、結果として原価率の内訳も変化します。
例えばウォーターサーバーブランドのアクアクララでは、フランチャイズ契約の場合、水の製造から顧客の開拓、配送、集金、メンテナンスまで幅広い業務を加盟店が対応。代理店契約の場合は、水の製造以外の業務を代理店が担当する仕組みになっています。
売上規模が同じであっても、契約形態が違えば各費用の内訳は大きく異なるもの。自社が担当する業務範囲を正確に把握した上で、個別に試算を行いましょう。
| 契約形態 | 主な収益 | 自社負担になりやすい費用 | 重視する指標 |
|---|---|---|---|
| 取次店 | 紹介手数料 | 営業人件費、広告費、通信費 | 1成約あたりの獲得費、承認率 |
| 販売代理店 | 販売手数料、継続手数料 | 催事費、営業費、顧客管理費 | 成約率、取消率、手数料の回収期間 |
| 配送・運営型 | 水の販売代金、月額料金 | 仕入れ、車両、倉庫、配送、保守 | 顧客あたり粗利、配送密度、解約率 |
ウォーターサーバー事業は、基本的に月額課金によるストック型のビジネスモデルです。そのため、コスト構成を示す「原価率」だけで収益性を判断するのではなく、事業全体の「採算」を別軸で確認することが大切になります。
単月の原価率だけでなく、1件あたりの顧客獲得単価(CAC)や平均継続期間、将来的な解約率までを含めて試算しましょう。事前の契約説明や料金表示が不十分であれば、早期解約につながり、想定した顧客生涯価値(LTV)は積み上がりません。
事業性を評価する際は、原価率という一点の指標にとらわれず、顧客が継続利用するプロセス全体の採算性を総合的に判断するようにしてください。
原価率が同じでも、顧客獲得費や継続期間が違えば採算は変わります。まずは顧客1件あたりの月間限界利益を出し、初期費用を何か月で回収できるかを確認します。
サーバー代や設置費を自社で負担する場合は、顧客獲得費と分けて初期対応費として計上します。解約時に撤去・整備費が発生するモデルでは、その見込額もLTVから差し引きます。
事業計画では、基準ケースだけでなく、配送費の上昇、注文量の減少、早期解約の増加を反映したケースも作ります。どの条件で赤字になるかを把握しておくと、料金改定や配送ルートの見直しを判断しやすくなります。
ウォーターサーバー事業の採算を判断するときは、水だけの原価率を基準にしません。提供原価、顧客獲得費、初期対応費、固定費を分け、契約形態とビジネスモデルに合わせて試算します。
候補となる事業やパートナーを比べる際は、同じ費用範囲と期間で計算し、顧客獲得費を回収できる月数まで確認しましょう。
ウォーターサーバー事業を始めるには、メーカーや代理店募集サイトから問い合わせて契約を結ぶのが一般的です。しかし、販売パートナーの事業内容はさまざまなため「思っていた収益モデルや業務範囲と違う」といったミスマッチが起こりかねません。
自社が既に持っている配送網や顧客基盤、媒体などのアセットを活かせるパートナーを選ぶことが大切です。
| 業務範囲 | 営業・配達・集金・メンテナンスまでを一気通貫で担う |
|---|---|
| 収益 | 獲得報酬、毎月の水代 |
| 業務範囲 | 営業活動、顧客対応 |
|---|---|
| 収益 | 新規契約手数料 |
| 業務範囲 | 紹介のみ |
|---|---|
| 収益 | 紹介料 |
※参照元:マイボイスコム調べ(2022年7月「ウォーターサーバーの利用に関する調査」にて利用経験者の満足度No.1)(https://myel.myvoice.jp/products/detail/28808)
調査期間:2022年07月01日 ~07月05日
調査対象:「MyVoice」のアンケートモニター
調査方法:インターネット調査
調査会社:マイボイスコム株式会社